『詩的神話』  第1章 〜 預言 〜

アフロディーテの預言書を

一羽のワシが拾い上げた

〈西に向かう風と、砂塵の嵐が闘争

している。そこに太陽と地を結ぶ

巨大な幾何学模様がそびえ立ち

閉ざされた碧い宝石を埋める・・・

愛とは、内蔵された光の露出である〉

 

 

ピラミッドの頂点から

迷宮の地下に眠る

王女の涙を

野生ワシは見てしまった

 

ほほをつたう涙は

あまりにも あまりにも

悲しく流れ落ち、

首元で、瑠璃色にきらめく

ラピス・ラズリの首飾りに様変わりした

 

驚いた王女は

涙の首飾りを握りしめ

その輝きを鏡に映し出した

 

反射した光沢の重ね合わせが

閉ざされた空間の振動を誘い

石壁の粉塵が竜巻を起こして

視界が途絶えた

ざっくりと大きな光の塊が往来し

隠し扉が開かれた

 

脱出した王女は

太陽の光を浴びるやいなや

宿世の黒き装いが砂鉄に吸着されて消え、

カリビアンブルーの民族衣装に包まれていた

 

眩しく、美しいその姿に眼を狭め、

野生ワシは砂漠にくちばしを突き刺し

青銅色のオアシスを創造した

これにより

アフロディーテの恩寵を賜って

王女と遭遇することを許された

 

王女の指先に残る涙の雫に触れると

いつの間にか翼は消え、

若きメシアに生まれ変わっていた

 

オアシスの水面に、真っ赤な唇と

ブリリアントの微笑みを浮かべると

王女とメシアは、

永遠の愛に溶けたかにみえた

 

 

煩罪の悲劇はそこにはなかった